広報の経験はないけれど自社のためにPRを強化したい、と考える中小企業の「ひとり広報」や「兼任広報」の広報PR担当者を支援するために、実務に役立つノウハウや情報をお届けしています。
今回は、「ステークホルダーやターゲットに自社の情報を確実に届けたい」と考える広報PR担当の方に、情報流通構造の変化とPESOモデルの概要を、【前編】【後編】でわかりやすくご紹介します。
ターゲットへ自社の情報を効果的に届けるためのキホンとして、広報PR施策を企画するときに欠かせない視点であることを理解いただけるはずです。
■情報流通構造の変化とは?
私たち生活者は、情報収集として新聞や雑誌、テレビ、ラジオなどの従来のマスメディアに加えて、インターネットやSNSなどの新たなメディアも利用するようになりました。しかも、個人のSNSアカウントや動画アカウントによる投稿によって、情報が一気に拡散し、テレビ番組に刺激を与えたりなどの影響力を高め、それぞれのメディアが相互に関係・影響しあうようになっている時代です。
このように情報流通が複雑化していることは、多くの人が実感するところでしょう。
補足になりますが、電通PRコンサルティング社は情報伝達の道筋を情報流通構造として注目し、その変化やトレンドの詳細を調査・発表しています。
■情報過剰・情報過多の実態とは?
では、その情報流通構造の実態はどうなっているのでしょうか?
そして、広報PR活動にどのように影響してくるのでしょうか?
ざっと、ひも解いていきましょう。
旧来メディアのテレビ・新聞・雑誌・ラジオに加えて、Line・Facebook・TwitterなどのSNSやYoutubeなどの動画メディアを含めたWeb等デジタルメディアのニューメディアが登場し、そしてスマートフォン利用者の急伸も同時発生し、私たちが接触する情報量は爆発的に増えました。
総務省の平成18年度情報流通センサス報告書によると、その情報流通量は1996年から10年間で530倍と示し、「情報爆発」だと定義しています。さらに、2000年のインターネット全体の情報量を10とすると、2020年は6000倍の6万だとも言われています。
問題点は、ひとりの人間が処理可能な情報量には限界があって、しかもほとんど増えない、ということです。このことで、情報爆発の時代では、処理されず無視される情報量ばかりが増えているのです。つまり、情報が埋もれてしまうことによって、ユーザーやターゲットに届かなくなっているのです。
広報PRの企画を考えるとき、この情報過多の状況を無視しては必要な情報を届ける&伝えることはできないことを知っておくことが重要です。
では、情報過多の時代に直面する広報PRの課題として、どのような力やスキルが必要なのかも考えておきたいところです。
情報が氾濫するなか、ターゲットやステークホルダーは瞬時に情報を選別するようになっています。
情報をスルーされないためには、ターゲットにとって価値があり、魅力のある情報コンテンツであることが必要です。
そのため、広報PRにはターゲットやステークホルダーにとっての価値のあるコンテンツ制作力と、効果的な情報発信力、が重要だと考えられます。
価値のあるコンテンツを、効率的・効果的に複数のメディアを連携させてターゲットに届ける方法として、「PESOモデルの活用」が役立ちます。
【後編】で詳しくご紹介していきます。
■(参考)企業の広報力とは?
ここで、「そもそも企業の広報力って、どんな能力が求められるのだろう?」という疑問がある方に、参考情報をご紹介します。
日本の上場企業全業種を対象に、広報活動の実態や課題を探ることを目的とした「企業広報力調査」というのがあります。企業広報戦略研究所により定期実施されているもので、企業の広報力を8つの指標で評価しています。
上場企業が対象となっている調査ですが、中小企業でも自社の広報強化にあたって今後の方向性を見通しておくのに役立つのではないでしょうか。
企業広報戦略研究所が示す8つの広報力を列挙しておきます。
(1)情報収集力
(2)情報分析力
(3)戦略構築力
(4)情報創造力
(5)情報発信力
(6)関係構築力
(7)危機管理力
(8)広報組織力
【前編】はここまでですが、いかがだったでしょうか。
もしかしたら、難しく感じた点もあったかもしれません。
しかし、注力すべき点は、自社の強みや魅力をどのように伝えていくのかを考えることではないでしょうか。
つづく【後編】でも、ぜひ一緒に考えていきましょう。
東京都中小企業診断士協会城北支部 広報部
田中尚美