「未経験だけど、自分で自社の広報をなんとか強化したい!」と考えている中小企業の広報担当者の皆さまに、東京都中小企業診断士協会城北支部より、広報PR(Public Relations)のノウハウをお届けしています。
今回は、広報を強化したいと考えた時に、最初に取り組むべきステップを紹介します。
「広報を強化したいけれど、何から手をつけたらよいかわからない」といった疑問も浮かぶことでしょう。そんなお悩みを解消できるヒントとして、「ひとり広報」や「兼任広報」の担当者の方々でも取り組めるよう、【前編】【後編】でわかりやすくご紹介します。
■広報スタート時の実施ステップ
広報をはじめるとき、最初に取り組むステップは次の4つの手順を考えるとよいです。
ステップ1.目的を明確にしておく
↓
ステップ2.情報収集をおこなう
↓
ステップ3.現状分析と課題抽出
↓
ステップ4.広報PR戦略の立案
【前編】では、ステップ1およびステップ2について詳しく解説します。
ステップ1.目的を明確にしておく
自社の広報を強化したいという意欲は、高い問題意識や当事者意識がある素晴らしい志です。間違っていません。ここで大切なことは「なぜ強化する必要があるのか」を考えぬいておくことです。今後の広報活動が進んでいくなかで、たびたび立ち返るところがこの目的になるからです。
どの企業においても広報の最終目的は、ステークホルダーに企業の価値を正しく理解してもらい、良好な関係を維持することです。そして継続的な性質があるものなのです。しかし、これから自社の広報を強化しようとするときに、この目的のままでは抽象的で、説得力も弱くなってしまいます。もう少し掘り下げた具体的な目的が欲しいところです。それでは、どう考えればよいでしょうか?
大企業とは違い、中小企業やスタートアップ企業は知名度が低く、正しく理解されていない場合が多いものです。そもそも、広報を強化したいという意欲は、「自社の強みや魅力を、多くの必要な人々に正しく知ってもらいたい、好きになってもらいたい」という望みから生じたものではないでしょうか?その望みを実現させるための青写真を、ファーストステージの広報目的として設定するとよいでしょう。
そのためには、「ありたい姿」と「現状の姿」とのギャップを利用し、広報目的につなげるのです。知名度が低い企業の場合は、自社の商品サービスを利用してもらうことが目的そのものになるケースもあるはずです。
そして、広報目的は経営戦略と結びつくものなので、経営陣と合意形成を図っておくことも大切です。また、自治体や公共機関の場合は、「地域・ステークホルダーへ正しい情報を伝える」「アウトリーチ活動を積極的に推進する」などの使命を果たすことが広報強化の目的になるでしょう。
ステップ2.情報収集をおこなう
目的が定まったら、次は情報収集を実施します。「何を、誰に、どのように情報発信するのか」を決めるため、現状把握をおこなうのです。
次の4つのポイントで情報収集するとよいでしょう。
(1)自社の広報ツールの現状を把握する
(2)競合他社や異業種の広報活動を把握する
(3)自社のステークホルダーや広報ターゲットを把握する
(4)自社の経営戦略と計画を把握する
(1)自社の広報ツールの現状を把握する
自社の広報ツールを調べ、現状を把握しておきましょう。会社案内、ホームページ、各種営業ツールやパンフレット、記者発表や報道実績のほか、SNS活用や社内報、イベントなども見逃さないようにしておくことも忘れずに。
(2)競合他社や異業種の広報活動を把握する
日頃の事業活動において、「他企業のよい点を積極的に取り入れたい」と企業は考えます。
広報活動も同じです。すでに成功している広報事例を自社流にアレンジして取り入れることで、ゼロから考えるより効率的・効果的に構築していくことが可能になります。この手法を「ベンチマーキング」といいます。
競合他社や異業種企業の成功している広報手法を研究し、自社の改善の方向性を明確にすることが可能になります。
ここで、ベンチマーキングの手法を簡単にご紹介します。収集する内容は、次の2点です。
・ すでに公開されている情報(新聞・テレビ、業界専門誌、株主投資家向けのIR関連資料など)を集める
・ 公開されていない情報を直接ヒアリングする
直接のヒアリングでは、「どのような意識で取り組んでいるのか」、「どのような組織体制や広報予算の組み方をしているのか」、「意思決定はどのような仕組みなのか」、「リスク管理はどのようになっているのか」など、公開情報では得られないノウハウを知るのに欠かせない手法になります。少々、難易度が高くなる方法ですが、熱意をもって実施したい取り組みです。
(3)自社のステークホルダーや広報ターゲットを把握する
ステークホルダーとは、企業における利害関係者を指します。
代表的なステークホルダーには、株主、顧客、従業員、取引先、行政や地域社会などがあり、自社の事業活動によって影響が生まれる対象を考えるとよいでしょう。
広報担当者は自社のステークホルダーを明確に把握しておくことが要求されます。リストの存在を把握しておくとベストです。具体的なステークホルダーを把握しておくことは、今後の広報活動のなかで、広報ターゲットを設定するケースが多くなるので重要になります。
(4)自社の経営戦略と計画を把握する
広報の計画段階では、最終的に広報戦略を立案することを目指します。その広報戦略には、経営戦略との調整が欠かせません。そのため、経営戦略・計画や事業戦略を理解することが重要なのです。経営陣とのコミュニケーションを図り、自社の経営課題も把握しておきます。
また、現場社員の意識をヒアリングしておくことも大変有効です。広報にどのようなことが求められているのかなど、貴重なヒントが多く得られるはずです。
【前編】は以上です。
【後編】では残りの手順について解説していきます。
東京都中小企業診断士協会城北支部 広報部 田中尚美