はじめての広報 広報PRノウハウ

新人広報担当者のためのDM活用のすすめ~実践編

前回までの振り返り
前回までのコラムでは、ダイレクトメール(DM)の基本的な概念とその効果について解説しました。
DMはターゲットに直接アプローチできる強力なマーケティング手法であり、特にスタートアップや中小企業にとってはコスト効果の高い手段です。
具体的には、ターゲットの絞り込み、メッセージのパーソナライズ、そしてレスポンスの促進が重要なポイントとして挙げられました。

DMを活用するためのステップ
DMを効果的に活用するための一般的な実施ステップは以下のようになります。

  1. 目的と目標の設定: DMを送る目的を明確にし、具体的な目標を設定します。例えば、ウェブサイトへのアクセス増加や店舗への来店促進などです。
  2. ターゲットの絞り込み: 顧客データを分析し、最も効果的にアプローチできるターゲットを選定します。年齢、性別、購買履歴などのデータを活用します。
  3. メッセージの作成: ターゲットに響くメッセージを作成します。パーソナライズされた内容や魅力的なオファーを含めることが重要です。
  4. デザインとレイアウト: 視覚的に魅力的なデザインを作成し、重要な情報が一目で分かるようにレイアウトします。
  5. 発送とフォローアップ: 適切なタイミングでDMを発送し、その後のフォローアップを行います。レスポンスを促すための追加のアクションを考慮します。

中小企業やスタートアップ企業がDMを活用する際の障壁と乗り越え方
DMという効果的な販促ツールもリソースに限りのある中小企業やスタートアップが活用する際にはいくつかの障壁が存在します。

  1. コスト面: DMの制作や発送にはコストがかかります。
    特に大量に送る場合、その費用は無視できません。ターゲットをセグメントで分け、より重要な顧客にターゲットを絞ることも重要です。
    例えばBtoB企業であれば、投資ポテンシャルや従業員規模、案件化の見込みの高い顧客に絞ってDMを発行し、それ以外の顧客へは紙のDMではなくコストの安いe-mailによるコミュニケーションを行うなどリターンを計算し、費用対効果を予算の中で上手に活用することも有効な考え方となります。
  2. リソース面: 小規模な企業では、DMの作成やデータ分析に必要なリソースが不足しているケースが多いと思います。
    最近では非常に秀逸なクラウドサービスやシェアリングエコノミーサービスが出現しています。
    ネットプリントを活用することにより自社でDMを印刷発送するよりも格段に安い価格でDMを印刷発送が可能です。
    また、DMのデザインについてもフリーランスを活用することで、1万円前後の価格でDMのデザインを作成してくれるサービスも存在します。
    これらの新しいサービスを活用することで、自社では対応できないリソースやノウハウを安価に活用することができます。
  3. 効果測定面: DMの効果を正確に測定することは難しく、どの程度の反応が得られたかを把握するのが困難です。
    この点については前回のコラムでも記載させていただいたように、DMにQRコードや専用のレスポンスフォームを設けることで、反応をデジタルで追跡しやすくなります。
    キャンペーンごとに異なるコードを使用することで、どのDMが効果的だったかを分析することができます。

筆者がスタートアップ企業や中小企業にDM施策をおすすめする理由
筆者は日本ダイレクトメール協会でダイレクトメールの効果などの研究や、DMの印刷を事業とする印刷会社のコンサルなどの経験があります。
そのような活動の中で、リソースに限りのある中小企業でもDM施策を有効に活用している企業には特徴があります。
その特徴とはDMのデザインや印刷発送のプロセスにおいて、とても上手に社外のサービスを活用しているという点です。
例えば、DMのデザインサービスの分野ではランサーズのフリーランスへ依頼すると1万円~3万円前後でDMのデザインを制作してくれます。(ダイレクトメール(DM)デザイナーのフリーランス個人の依頼・外注-ランサーズ)

また、印刷発送であればラクスル(DM・ダイレクトメール(印刷+発送代行)|ネット印刷のラクスル|はがきや封筒DMを作成から送付までできて安い)のサービスを活用すればDM1通あたり70円以下で印刷と発送をおこなってくれます。
通常はがきの郵送料が85円になった現在、印刷費用込みの値段で70円以下で発送できることを考えると積極的に社外のサービスを活用するメリットを体感できるのではないかと思います。

これらのサービスの出現により、企業は気軽に質の良いクリエイターを雇用することなく、必要な時に必要なだけ活用することができるようになりました。
また、最近では生成AIの活用シーンも増えてきており、DMで実現したい目的などの情報をインプットするとデザインを瞬時に作成してくれるなど、生成AIによるデザイン制作についても浸透してくるのではないかと思います。

これらのテクノロジーの進化はDMという販促ツールを実施するプロセスにおいてもプラスの影響を与えており、中小企業やスタートアップ企業がDMという販促ツールを活用する際の障壁を低くしています。

まとめ
DMは、ターゲットに直接アプローチできる強力なマーケティング手法です。
コストやリソースの不足、効果測定の難しさといった障壁を越えるための対策を講じることで、より効果的なDM施策を実施することができます。

インターネットやテクノロジーの進化や社会環境の変化により、DMという販促ツール自体の価値が高まるとともに、今やどの企業でも活用できる環境が整っています。
生成AIはさらにその進化を早め、企業はDMだけでなく販促施策を容易に実行することができるようになるでしょう。

DMという販促ツールを企画し、実行することは、ターゲットを設定し、そのターゲットに何を伝え、どのように行動をしてほしいかを考え、成果につなげるマーケティング活動そのものであり、自社を知り、顧客を知り、打ち手を考える機会は中小企業にとってマーケティングノウハウを蓄積する効果的な実践の場であると筆者は考えます。

台頭するシェアリングエコノミーや生成AIなどの新しいサービスを上手に使いながら、中小企業やスタートアップ企業がDMという販促ツールを通してマーケティングに関するノウハウを蓄積し、さらなる成長を実現されることを切に願います。

 

東京都中小企業診断士協会城北支部
畠中竜吾

 

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