はじめての広報 広報PRノウハウ

【小規模事業者向け プレスリリースの書き方②】
~街の個人商店がメディア取材を呼ぶ1つの方法~その2

②取材決定に至らない残念なケース~メディア側取材記者と企業側との“壁”を乗り越える~
前回、メディアの事情についてご紹介しました。今回は、どんなリリースだったらメディア担当者が関心を持つかについて掘り下げていきます。
まず前提として、個人商店などの小規模事業者が新聞の1面・経済面やテレビのストレートニュース(最新のニュースとして紹介されるもので特集ではないもの)に取り上げられる可能性は限りなく低いです。
小規模事業者が狙うとすれば、多くの場合は新聞の地域面の「この街・この店」的な特集紙面や、テレビの「〇〇レポーターが潜入」的な企画コーナーが考えられます。
こうした企画は、記者などの現場の担当が企画書を書き、会議にかけるという過程を経ることがほとんどです。その過程をクリアするには、新聞・専門誌の紙面幅やテレビ等の放送時間をそれなりに取る企画モノだけに、上司を説得しうる情報の「質と量」が必要になります。

現場の企画書を書く担当記者は、企業からのプレスリリースに興味を持つと、その会社のホームページ、ネット情報などを、“必死に”追加情報を集めて企画書になりうるストーリーを作ります。(そもそも、該当する小規模事業者の公開情報を収集するのは容易ではないので、担当記者の労力に負荷がかかってきます。)
さらにリリースを出した企業に電話やメールでアクセスし、追加取材も行います。

ここで発生しがちな問題として、企画書に載せるべき価値ある情報を事前取材で表出化しない場合があることです。この事前取材が成功するかどうかは、メディア側・企業側の双方の担当者の相性・性格・力量によって左右されるものであり、重要な局面になります。
例えば、よくあるケースをご紹介します。
メディア側は商品に込めた店主独自の「思いや過程」を聞きたいものですが、企業側は「他社にはない当社のノウハウを活用したい!」などと抽象的に答えるにとどまってしまうということがあります。そうすると、メディア側の担当記者は上司に「他社にないノウハウって何だ!やり直し!」と突き返されてしまい、企画が通らない結末も起こりえます。これは、メディア側の担当記者にとって、それまでに費やした時間や労力がムダになってしまうことにつながり、こうしたリスクをどうしても避けたいと考えます。
そのため、メディア側の担当記者は、「この企画が通るかわからない中、資料の請求やしつこい電話取材しておきながら、最終的に断ることになる可能性も高くなりそうなので、他にもっといいネタがあるか探そう」と思うこともあるのです。そうすると、取材を受けてきた企業側の担当者にとってもチャンスをムダにするリスクになりかねません。

私は、こうした壁を効果的なプレスリリースによって乗り越えることはできると考えています。
ちなみに、前回も触れましたが、既に記事化・掲載化、放送されたものは、プロの手によってこうしたミスマッチを乗り越えたものになっているので、他のメディアにとっても取材可能性が高くなります。

③メディア側が「連絡してみようかな」と思うプレスリリースとは?~何を書くか~
では、プレスリリースに何を書くのか?一般的なプレスリリースの鉄則!的な書籍や記事には「簡潔に」と書いてありますが、私がおすすめするのは「電話連絡しなくてもそのまま企画書にできる情報」を盛り込んだ簡潔とは言えないプレスリリースです。
ここで架空の“創業100年の和菓子屋さんのちょっと変わった新作の饅頭”、について考えてみます。
簡潔にすると・・・
「こだわりの原材料を、100年伝わる製法で、新たな〇〇を加えて洋風に仕上げた!」
といった売り文句はよく見ます。

一方、「この店を紹介する意味」を探しているメディア側にとってはこの情報からは何も読み取れません。
原材料にこだわるのも、伝統がある店も、和を洋に仕上げる食品も全国どこにでもあるので、この情報は企画書の要素にはなりえません。
欲しいのは、「こだわり」とは何か?「120年伝わる製法」とは?「なぜ洋風にしたのか?」といった「このお店ならでは=このお店を紹介する意味に繋がる」情報です。
例えば、
「店主が青森の農家〇〇さんを訪ね、意気投合し、お酒を飲みながらそのこだわりに感銘して仕入れを決めた。以後△△な関係が続いている」
「120年間、父の代で一瞬途切れかけた製法だが、近所で▲▲店と営む、〇〇さんに励まされて、何とか継承してきた」
「和菓子店を継ぐことに疑問を持っていた3代目が、イタリア留学したときに食べた〇〇を元に考案」みたいな情報が出てくるとどうでしょう?
ようやく「このお店ならでは」の情報になるのです。

つまり、顔や情景が見える情報を載せることでストーリー性が出てきます。こうした情報、メディア界隈では「手触り感」と言ったりもします。
1枚にまとめる必要はなく、写真などを追加しながら4~5枚になっても構わないと私は思っています。

次回も引き続き、どんな情報をどう書くか?にスポットを当てて具体的に掘り下げていきます。

東京都中小企業診断士協会城北支部 広報部
岡本 陽介

お問い合わせボタン

-はじめての広報, 広報PRノウハウ

© 2024 (一社)東京都中小企業診断士協会城北支部