城北国際情報局

夢洲から始まる、日本の新・大航海時代

城北支部 国際部 宇野 安

開幕早々の昨年4月下旬、大阪・関西万博に行った。木造の大屋根リングは壮観だったし、予約なしであまり並ばず入れたオランダ、スイス、イギリス、北欧、UAEのパビリオンは、それぞれ自然や科学の重要性を訴えていて面白かった。例えば、オランダ館は「次世代への太陽」をテーマに、太陽を象徴する巨大な球体を中心とした再生可能エネルギーや循環型経済の展示で持続可能な未来への希望を表現していた。スイス館のテーマは「自然とテクノロジーの共生」で、アルプスの自然や文化を背景に最先端技術やサステナビリティを体験できる構成だった。環境負荷の少ない建築も特徴的だった。

[オランダ館のミッフィー] 

大阪で、前回、万博が開かれたのは55年前の1970年だった。まだ生まれていなかった診断士も多いだろう。高校生だった私は、夏休みに東京から新幹線に乗って見物に出かけた。太陽の塔がそびえ立っていた。人気のアメリカ館やソ連館は延々と長い行列で入れなかった。暑かった。とにかく人が多かった。おぼろげながらそんな活気と熱気あふれる雰囲気だけを覚えている。そこで、その後大きく変化した世界各国の現在地と未来を見ておきたいと思い、東京ではあまり報じられず評判も芳しくはなかった夢洲の万博会場へと向かった。初めは気味悪く感じたマスコットキャラクターのミャクミャクにもいつの間にか親しみを感じて、帰りに土産物店でマスコット人形を買った。

[ミャクミャクと青空に映える大屋根リング、左奥にはガンダム]

行ってみると日本が世界と触れ合えるまたとない機会で大きな意味があると強く思った。AからFまでのコモンズ館は複数の国や地域の合同パビリオンだ。実際にはなかなか行くことのできないアフリカや中南米、オセアニアの小さな国や地域もそれぞれブースを構えて自国の文化や技術を紹介していた。世界中から、各国が、日本の大阪まで来てくれているのだから、大阪や関西の人だけでなく東京や関東、全国の日本人、特に若い人たちが、夢洲に足を運べばよい、と思った。あいかわらず長い行列で人は多過ぎたし、地球温暖化が進んで夏は異常を超える猛暑だったので、高齢者や小さな子供連れにはお勧めしなかったが。

[アフリカや中南米・カリブ海の国々中心のコモンズB館]

先日、万博と関係が深かった堺屋太一の「団塊の後 三度目の日本」を読んだ。2015年に書かれたこの小説は2025年から2026年の日本が舞台の近未来小説だ。現在の日本の経済や社会、政治の状況を暗示していて興味深かった。作中の徳永総理は「楽しい日本」を提唱していたので、石破総理の「楽しい日本」はここから拝借したのだと合点がいった。読後、霞が関や永田町の事業通ならば、日本の現状に照らして思うところがあるはず、とも感じた。思うところ、つまり堺屋太一が遺した警鐘は、読んでのお楽しみ。

[小説 団塊の後]

もう一つの読後の感想は日本の未来の予測は簡単でないということだった。作中描かれた10年後の日本は、現実と異なり、コロナ渦を経ることなく、ロシアによるウクライナ戦争やイスラエルのガザ侵攻も起きていない。とは言え当たらずとも遠からずで、作中創作の様々な事象が、これから現実にならないとも限らない。

55年前の大阪万博の展示物だった技術や製品・サービスは後年実現したものが多かった。ワイヤレス・テレホン、ウォッシュレット、歩く歩道、電気自動車、リニア・モーターカー、回転寿司。今回の夢洲の大阪・関西万博で紹介された、空飛ぶクルマ、ペロブスカイト太陽電池スマートウェア、超低遅延・超大容量・超省電力の通信ネットワークIOWNの技術は既に実現している。

日本人が世界と未来に関心を持って、海外の動きを知って刺激を受けることは、これからの激しい世界の変化に対応していくために役立つに違いない。海外との接点を増やして情報を集め、国内外で新たな商材や商機を窺い海外取引や海外事業に挑戦する。日本の中小企業にとっても、そういう大航海時代が到来したのだと思う。

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