城北支部 国際部 細井 大輔
1. イベント概要
2025年9月10〜12日、シンガポールで Seafood Expo Asia 2025 が開催され、現地を視察した。
名称は「シーフード」だが、並ぶのは魚介類だけではない。水産加工品、調味料、包装資材、冷凍・冷蔵機器、検査・認証、物流・コールドチェーンまで、サプライチェーン全体をカバーするBtoB見本市だ。
出展者は 約270社。国別では中国が約90社と最も多く、カナダ約20社、日本約15社、韓国・米国・ベトナムがそれぞれ約10社。さらにスペイン、ポルトガル、ノルウェー、台湾など多様な国々から出展があった。
2. 現地での印象
空調の効いた大ホールに一歩入ると、熱気が感じられた。
とりわけ目を引いたのは 中国勢。大連、山東、福建、海南など沿岸地域の企業が中心で、水産加工や輸出がメイン。一部には冷凍設備や包装資材、検査・品質管理といった関連企業もあり、「産業全体をまるごと持ち込む」ような厚みがあった。
各国のカラーも際立っていた。カナダはロブスターやカニを軸に大西洋州をまとめたパビリオンで力強い訴求。ベトナムはパンガシウスやエビ製品など、地元ならではの素材が目を引いた。
日本は15社・団体が参加。日本養殖魚類輸出協会は刺身の試食で来場者を惹きつけ、日本ほたて貝輸出振興協会のブースには人だかりができていた。中華圏ではホタテはもともと人気食材であり、中国系来場者から「日本産を扱いたい」という声も聞かれ、日本のブランド力の高さを実感した。
さらに高知県のグループ出展では地域色を打ち出し、個性の際立つ伝統食品「酒盗」も新製品コーナーで紹介されていた。こうした個性豊かな商品にも関心が寄せられることは、外国市場が幅広い和食を受け入れる素地を持っていることの表れだ。
3. 海外進出を目指す日本企業への示唆
会場を歩いて強く感じたのは、中国が「数」で圧倒する存在感を放っていた一方で、日本の「品質」や「独自性」へ関心が集まっていたことだ。ホタテや養殖魚の試食ブースに人だかりができていたのは象徴的で、日本製品は十分に戦える潜在力を持っていることが確認された。こうした関心を、いかに工夫してビジネスにつなげるかがカギになる。そこから導かれるのは、日本企業が海外展開に挑戦する際に押さえておきたい二つのポイントだ。
① コストを抑えて海外に挑戦する
海外展示会は大きなチャンスだが、ブース費、渡航費、人件費、輸送費などで少なくとも数百万円単位のコストがかかる。但し、JETROや業界団体、自治体の共同出展、各種補助金を活用すれば負担を抑えられる。まずは小さく参加して学びを得るアプローチも有効だ。
② 成果を残すための仕組み
展示会は一度きりで成果が出ることは稀で、複数回の出展で試行錯誤を重ねてようやく手応えが見えてくる。そのためには、目的の明確化(例:嗜好調査・代理店開拓・顧客販売等)、KPIの設定(来場者数・名刺獲得数・面談数等)が欠かせない。
特に重要なことは 「足を止めてもらうだけで終わらせない」 ことだ。デモや試食などで関心を引いた後、来場者の声をその場で記録し、有望な相手とは名刺交換とメモを残す。できれば当日中にフォローし、質問への回答やオンライン面談を打診する。この一連の流れを仕組み化しておけば、初めての出展でも成果につながりやすい。

4. おわりに
海外市場には大きな可能性がある一方、挑戦には準備と工夫が欠かせない。展示会は海外展開の有力な手段の一つであり、現地の声を商品開発に生かしたり、顧客・代理店候補を探して営業プロセスを築いたりする貴重な機会となる。
不安やコストの壁は避けられないが、補助金の活用や外部の知見を取り入れることで挑戦のハードルは下げられる。大切なことは、一歩を踏み出し経験を積み重ねることだ。困ったときには専門家に気軽に相談しながら、自社に合った海外展開の形を模索してほしい。
