城北支部 国際部 小関 力也

訪日ムスリム観光客のイメージ(Adobe Fireflyで生成)
- なぜ今、ムスリム訪日旅行に注目なのか?
私自身、これまでムスリム(イスラム教徒)の文化や知識に詳しい訳ではありません。しかし、インバウンドビジネスに携わる中で、世界人口の約4分の1(約20億人)を占める巨大市場であると知り、関心を抱き、調べてみました。
2025年の訪日外国人は4,268万人でしたが、そのうちムスリム訪日客は約164万人(全体の約3.8%)程度と考えられます(Food Diversity. Today 2026年8月15日コラムより)。国籍別ではインドネシア(約55.7万人)、マレーシア(約40.8万人)が上位を占めます。世界第4位の人口(約2億8,444万人)を抱え、その87%がムスリムであるインドネシアは、地理的近さからも今後の訪日旅行において大きな伸びしろを秘めています。東南アジアからのムスリム受け入れが進めば、中東等その他地域からの訪日客増にも繋がる可能性もあります。
- ムスリム旅行者が直面する「食と礼拝」のハードル
イスラム教の教えでは、人にとって良いものは「ハラル」、禁じられたものは「ハラム」と整理されます。代表的な「ハラム」として、豚肉・豚由来品やアルコールの摂取、素肌を見せることなどが挙げられます。訪日旅行の場面を考えると「ハラム」に当たらない豚肉・豚由来品やアルコールを含まない食事の提供が不可欠です。また、毎日5回の礼拝を行うため、出先での礼拝スペースの確保も大きな課題となります。
- 中小企業にとってのビジネスチャンス
ムスリム向け情報サービス「Halal Navi」の調査(2024年2月調査)によると、訪日ムスリムへのアンケート結果から下記の課題が浮き彫りとなりました。
- 「ハラルフード対応に不安を感じる」86.1%
- 「お祈りの場所を見つけるのが難しい」83.6%
一方、7割以上が「目的地選びで礼拝場所の有無を優先する」としており、専用アプリや口コミで事前検索して動くため、対応店舗には「指名買い」が発生しやすい特徴があります。この市場で、中小企業が早くからムスリム対応を取り入れることは、広告費をかけずに「選ばれる店舗」となれる大きな可能性があります。

天ぷらは野菜や海鮮を使い、揚げ油を植物性油脂にし、衣は豚由来やアルコールを含まないものを使うとハラル対応しやすいと言われています。
- 最初の一歩を踏み出すために
文化の違いを敬遠せず、「正しく知る」ことから始めることが重要です。費用をかけて第三者に証明してもらうハラル認証取得など厳格なハラル対応だけが正解ではありません。
設備投資を抑えたソフト面の改善から着手する「ムスリムフレンドリー」という考え方があります。具体的には下記のような取組みです。診断士の皆様も、地域企業の新たな強み作りや、経営者の成長エンジンとして、取り組み支援を始めてみてはいかがでしょうか。
- 表示の工夫(原材料表示の可視化、ピクトグラムの導入など)
- 環境の整備(簡易礼拝スペースの設置など)
- 公的支援の活用(自治体や観光庁の各種補助金 ・観光庁「ベジタリアン・ヴィーガン/ムスリム旅行者おもてなしガイド」等のガイドライン)
豚肉・アルコール不使用メニューのピクトグラム例
(Ac-illust.comイラスト素材より)

ハラル関連参考情報(主な情報サイト)
・Food Diversity. Today
・Halal Gourmet Japan
・Halal Media Japan
